『サウンド・オブ・ミュージック』/1965/監督:ロバート・ワイズ/米/カラー/2012.1.5執筆 ----------------------------------------------------------------------- 「ドはドーナツのド」というフレーズに聞き覚えのない日本人はそう多くはいないだろう。このフレーズから始まる「ドレミの歌」は音名を覚える歌として非常に有名であるが、出典が映画だということはあまり知られていない。 破天荒な修道女マリアと、彼女が家庭教師を引き受けた問題だらけの名門トラップ一家との間に生まれた家族愛を描いたこの『サウンド・オブ・ミュージック』は同名のミュージカルを基にした作品で、今なお世界中で愛されるミュージカル映画の金字塔といえる。 ミュージカル映画というからには当然劇中では歌の場面が多いが、原作の『トラップ・ファミリー合唱団物語』という題名からもわかる通り、歌そのものがストーリーの中で重要なファクターとなっている。たとえばマリアが雷に怯える子供達の恐怖を紛らわすため歌を歌い子供達の塞ぎこんだ心を開放したり、歌によってそれまでコミュニケーションの方法がわからなかった家族の心を一つにしたり、あるいは終盤では歌うことが合唱団として名が広まった家族を窮地から救う手立てとなる。 そういった内容のためか、この映画からは歌の持つ力が伝わってくる。それは、物語の主人公であり原作の著者でもあるマリア・フォン・トラップの持っていた「希望の力」に他ならない。物語の背景に浮かぶのは第二次世界大戦の最中ナチスドイツの台頭によって変化していくオーストリアの情勢。それらに翻弄され、祖国を失いながらも自由と矜持を胸に亡命する一家。彼らにとって歌とは至上の喜びであり、家族の絆であり、生きる糧でもあり、そして誇りなのだろう。 あえてコメディチックな脚色を施し、終始トラップ一家の明るさを損なわないような演出にしたのは、激動の時代に生きる人々の心に根付いた暗い感情を消し去るべく希望を歌っていった彼らの思いを汲んでの事かも知れない。エンディングに流れる「Climb Ev’ry Mountain(すべての山に登れ)」がその証ではないだろうか。 余談ではあるが、この映画は学生時代ミュージカルに打ち込んでいた私が人生で初めて観たミュージカル映画であると同時に初めて舞台で演じた作品でもある。当時は観る側だった私がいつの間にか舞台に立ち歌っていたのは、きっとこの映画が「My Favorite Things(私のお気に入り)」だったからだろう。 ----------------------------------------------------------------------- 執筆:うづき |
2012年1月6日金曜日
映画 『サウンド・オブ・ミュージック』 歌の持つ力
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