2012年1月22日日曜日

映画 『ローマの休日』 二人の少女の日常





 『ローマの休日』/1953/監督:ウィリアム・ワイラー/米/モノクロ/2012.1.21記

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 『嵐ヶ丘』や『ベン・ハー』などの監督として非常に高い評価を受けた完璧主義者ウィリアム・ワイラーの映画界における最大の功績は何かと考えた時、私はこう答えるだろう。オードリー・ヘップバーンを見出したことだと。

 そのヘップバーンが主演を務めたこの作品は、内容は言ってしまえばチープなラブロマンスでしかない。激務に追われヒスを起こしてしまうほど現状に疲れた某国王女と、ひょんなことから彼女に永遠の都ローマを案内することになったスクープを狙う新聞記者とのたった一日の儚い恋・・・なんとも「よくある話」だが、現代においても「よくある話」なのはそれだけ大衆に愛される内容なのだということだろう。





 私がこの映画を初めて観たのは14歳の時だった。それまでヘップバーンの名を耳にしたことはあっても実際に出演作を観ることがなかった私は衝撃を受ける。物語冒頭「あぁ、綺麗な人だな」程度だった彼女への印象が中盤に一変する。そう、「真実の口」のシーンだ。


 あのシーンは、王女と恋に落ちる記者を演じるグレゴリー・ペックとワイラーがヘップバーンの実力を引き出すために仕掛けたいわばドッキリだったことはよく知られているが、その時のあまりにも可愛らしい等身大のリアクションは、後に世界中の男性を虜にする彼女にとって最初の魅了の魔法だったのかも知れない。事実、あのシーンが彼女の人気を鰻登りにさせたと言っても過言ではないだろう。

 真実の口を物珍しそうに眺める王女に対し、お茶目ないたずらを実行する記者。それは「非日常的日常」から「日常的非日常」へと迷い込んだ「二人の少女」に向けた、少しばかり意地悪で、けれどもどこか優しい、少女を見守る大人からのメッセージだったのではないだろうか。


 王女は「非日常的日常」へと戻り、一日限りの夢は写真という思い出に残るばかり。しかしヘップバーンはこの映画から一躍トップスターとして「日常的非日常」を生き続けることになった。色褪せることのない、終わらない夢として。




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記:うづき

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