2012年7月8日日曜日

映画 『鉄路の闘い』 もう一つのノルマンディ







『鉄路の闘い』 /1945/監督:ルネ・クレマン/仏/モノクロ/2012.6.10記



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 第二次世界大戦末期のフランス、連合軍のノルマンディ上陸作戦に対処するため、ドイツ軍は戦線に物資や兵器を贈ろうと図るも、レジスタンス達は様々な破壊工作でこれを阻止せんとする。実際に起きた鉄道員たちの戦いを元に製作された映画である。ドイツ占領下のフランスにおける鉄道員レジスタンスの活動を描いた作品。





 監督は後に『禁じられた遊び』等で知られるルネ・クレマンである。国策映画なのであるが、戦後間もなくの戦勝ムードもあってかプロパガンダ的な思想描写はあまり感じさせず、非常に痛快な活劇的仕上がりとなっている。また登場人物を演じるは俳優ではなく、実際にレジスタンスとして戦中に活動していた者たちであり、役者ではないとはいえ本物ならではの一癖も二癖もある凄みをどことなく漂わせている。


 レジスタンス達が行う破壊工作は恐らく、実際に行われていたものだと思うのだが、年数が生み出したアナログ感がたまらない。かなり工程も細やかに再現されているために、スチームパンクやスパイ物を見ているようで非常に面白いのだ。メカニックシーンも多く鉄道車両を中心に実に多数の重機器を登場させており、そのすべてがパワフル映しだされおり、あまりにガンガン起動させるので発せられる蒸気と飛び散る機械油で画面がとにかく埃っぽくなってしまっているのも魅力的だ。





 対する独軍も多数用意され、実に細やかに描かれており、特に装甲列車の存在が圧巻である。重々しく砲塔を動かし、レジスタンスに狙いを定める描写のなんと迫力のあることよ(恐らく実物?)。また警戒車両としてつまれているルノーR35はきっちり列車から降ろされて、自走する姿も拝める始末。脱線シーンは本物のドイツ軍車両を列車に積んで実際に派手に脱線させる大盤振る舞いである。というかもったいないw


 この作品はルネ・クレマンの長編処女作となり彼の名を一躍有名にするものとなった。戦後すぐの作品ということで、元々は実物軍用車両が多数出演していることで興味を示し、恐らく説教臭い内容なんじゃないかなあと思って見たのであるがいい意味で裏切られた作品。


 題材的には堅苦しそうな雰囲気の漂う映画であるが、その実非常に骨太で力強い戦争映画である。





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記:るん