『オペラ座の怪人』 /1925年/監督:ルバート・ジュリン/米/モノクロ/2012 ----------------------------------------------------------------------- 言わずと知れたガストン・ルルーの小説を映像化したもの。1916年にドイツで製作されたものに続き映画化は2度目となり、一般によく知られている視聴可能なオペラ座の最初期となる作品である。 本作におけるオペラ座の怪人ことエリックは後の作品に見られるような悲しき背景を持った異形の天才と言った描かれ方はまだされておらず、生来の外見の醜さと歪んだ精神をもったサイコパスとして原作に忠実なキャラとなっている。演じるは『千の顔を持つ男』ことロン・チェイニー。彼の扮するそれはまさに狂気の天才である。仮面舞踏会において死神のような紛争で客人たちを前に演説する姿は怪人の美学と自信に満ち溢れているのだ。 本作のエリックはやはり他の映画とは一線を画した魅力を持っている。顔をパテや針金を使用して変形させてまで創りだした骸骨のような顔とサイレント独特の大時代的な演技で見事に狂人を表現しきっていると感じてしまう(因みにこのメイク時、チェイニーは鼻に金属を通して整形するためものすごい量の鼻血を流していたとの証言もある)。悲哀性を感じられない分、悪としての魅力が思う存分楽しめるのだ。 そして現在も保存されているというオペラ座のセットは何か巨大な装置を眺めているようでワクワクさせてくれる。オペラ座華やかな舞台から乱雑な楽屋、そして断面図のように映し出される汚水に満ちた広大な地下水道と本当に一体いくつの舞台がこの劇場に存在するのかわからない。 これが怪人の潜む居城なのだから、ゴシックホラー好きにはたまらないものがあるのだ。 前述したとおりエリックは不慮の事故で精神が歪んだわけでない。そのためか劇場に身を隠していると言うよりはこの暗闇を愛しているからこそ地下水道に居を構えてるような印象を受ける。 それがまた彼を闇の住人としての魅力を否が応でも輝かせてくれるのである。 しかし、当時の映画製作者はある意味【歌】が主人公でもあるこの作品をサイレント時代に製作しようと考えたものである。冒険的な製作ながら本作は大ヒットを記録し、ホラー路線に懐疑的だった経営陣を振り向かせることに成功した結果、この後ユニヴァーサルは数々のゴシックホラーの古典的名作群とキャラクター達を生み出していくことになる。 ----------------------------------------------------------------------- 記:るん |
2012年5月30日水曜日
映画 『オペラ座の怪人(1925)』 稀代の怪優
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