▼『狩人と犬、最後の旅』 ▼『ボルベール<帰郷>』 ※ネタバレ有 『狩人と犬、最後の旅』/2004/監督:ニコラス・ヴァニエ/仏・加・独・瑞西・伊/カラー/2012.2.5記 ----------------------------------------------------------------------- 2012年1月よりはじまったテレビ東京深夜枠「サタシネ」で視聴。タイトルから「犬映画か。私犬映画嫌いなのよね。お涙頂戴で」とスルーしかけた。つまり動物モノには弱い。一応、雪山が舞台ということで景色映像目的から観ることに。 実在の狩人ノーマンさんに惚れた監督が彼自身を撮った半ドキュメンタリー。迫る近代化の波で狩場の動物が減り、生活が困窮するなか、半世紀続けた狩人にノーマンは限界を感じ始める。だがダメ犬がリーダーシップとして成長していく姿に、ノーマンさんは彼のためにも暫く狩人を続けようと心を決める。 狩人とはいえ、道具の維持や犬達の管理には費用がかかる。病気や身体が思うように動かなくなることもある。結局のところ、一度構築された文明社会において、完全なる自然のなかでの暮らしに戻ることは、周囲の世界が許さない。 主に過酷な雪山での狩猟生活を淡々と描く。思ったよりも犬映画で露骨な感動を誘うような代物ではない。というかストーリー要素は半ドキュメンタリーという事もあり、かなり薄い。とにかく「都会に疲れて動物たちと大自然で暮らしたいわ」という浅はかな幻想を見事に破壊してくれる辛辣な雪山の映像美。 ----------------------------------------------------------------------- 記:ヒロト 『ボルベール<帰郷>』/2006/監督:ペドロ・アルモドバル/西/カラー/2012.2.5記 ----------------------------------------------------------------------- 不法行為が“日常”の一部のスペインの下町。何があろうと(殺人でも)家族の為に必死に生きる、明るい女達の物語。父親にレイプされかけた娘を庇う母親役のペネロペ。死体を隠す無人のレストランを不法占拠し経営しはじめる彼女に、父親と共に死んだはずの母親が目撃されたという噂が耳に届く。 それらが交錯し……そうだが、ミステリー的には交錯しない。 ペネロペは母を嫌っていた。自分の父親にレイプされており、その事に気づかない母親が憎かったのだ。だが母親は気づいており、娘を守るために父親を殺した。つまり世代を超えてペネロペは憎んでいた実母と同じことをしていたのだ。 だがミステリーはそこまで。 彼女達は家族として再生していく。失われた祖母・ペネロペ・娘の関係が築かれていくというわけだ。焼死したペネロペ父や、刺殺された夫は墓参りされて弔われるが、事件が法的操作へ……という展開は無い。 不法滞在外国人娼婦や、違法売買などが“日常”の一部であり生活である街が舞台。法律だとか社会的正義とかは何処吹く風。彼女たちが何よりも優先するのは家族の生活なのである。神の視座から降り、彼女達の視線に立てば当然の選択だ。 だが、最後まで“日常”感を奪い、違和感を残してしまうのが、地味な娘とも死んだはずの母親とも似ていない、ノーメイク貧乏設定のド派手メイクのペネロペの美しさとナイスバディ。 ----------------------------------------------------------------------- 記:ヒロト |
2012年2月5日日曜日
映画 『狩人と犬、最後の旅』 許されぬ自然に帰す個人/
映画 『ボルベール<帰郷>』 法に優先されるは家族/ 二本立
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