2012年2月14日火曜日

映画 『シャッターアイランド』 怪物の世界なら死んだ方がマシだ/
映画 『シモーヌ』 価値とは他人から見ればカルト/ 二本立


『シャッターアイランド』
『シモーヌ』 ※ネタバレ有





 『シャッターアイランド』/2010/監督:マーティン・スコセッシ/米/カラー/2012.2.13記

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 数日間ディカプリオ作品を立て続けに見ていたので「そういえば観てなかったな」と思い出しレンタルしてみた。以前に微妙だとアドバイスされていたのだが忘れていた。後悔した。


 過度に謎解きを宣伝する映画は、逆をいえばネタバレされてしまえば魅力が薄くなる作品が多い。


 その代表例が『シックスセンス』だろう。


 この手のものは宣伝方法にも問題がある。「絶対に結末を人に教えないでください」というキャンペーンが、この手の映画には必ずつきものなのだが、これをされれば観る側は「よぉし、絶対に推理してみるぞ。一体どんな謎があるんだい」と、完全に探偵モードになってしまう。つまりハードルが数段上がる。慣れている人になると、自分の中で映画に隠された謎のレベルをどんどん上げてしまい、途中で真実に辿り着いても「いいや、もっと謎は深い筈だ」と自己完結する。結局のところ、途中で気づいた答えが真実なのだが、終わってみれば残るのはガッカリ感と物足りなさだ。




「なんでぇ、こんなものか」


 勿論ネタバレはしないが、あえて仄めかすなら、戦争という人間の本性を垣間見てしまった人間にとって、人工的につくられた箱庭で、偽りの皮を被った正体不明の化け物どもがのさばる平和な世界ほど、


恐ろしいシャッターアイランド(閉ざされた世界)なのである。



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記:ヒロト






 『シモーヌ』/2002/監督:アンドリュー・ニコル/米/カラー/2012.2.13記

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 2012年2月に『ガタカ』のニコル監督最新作である『タイム』が公開されるので関連作でも観るかとレンタル。


 俳優に振り回されるのが嫌になった、売れない芸術家肌監督アル・パチーノは、自分の数少ないファンだった故人から譲り受けた女優シミュレーションシステム「SIM-ONE」をシモーヌとして女優デビューさせ、俳優至上主義たる世間と映画製作所をからかおうとする。だが結果は別の意味で大成功。シモーヌは清純派女優として世界的大ブレイク。然しパチーノ監督以外の作品には露出しない事から、監督は叩かれ、シモーヌの評価はうなぎのぼり。結局、俳優に振り回される運命にあるパチーノが四苦八苦するブラックコメディ。





 この手のバーチャルアイドル系は説得力の困難さを内包する。昔から作られた存在が偶像として求心力を集めるというものは多々あるが、視聴者側からすれば「ほんとかよ」という気持ちが起こるのは当然の流れ。そう思わせないだけの偶像をつくりあげるのは非常に難しい。逆にそうした偶像を崇める連中を奇異の目で眺めるタイプの作品もある。


『シモーヌ』は後者だ


 芸術家肌の監督が真実をぶちまけたい気持ちと、彼女のおかげで良い生活できていることのジレンマから苦しむ流れは、イメージの虚構で成り立つ映画界を実に皮肉っている。





 はっきりいって映画を観ても、シモーヌに魅力は無いが、演出的にただしい起用の仕方である。作られた存在である彼女に全世界が熱狂してしまい、誰も気づかない。端から(視聴者目線で)見ればカルトにしか見えない。だが、演技力やら作家性、ひいては芸術なんて、理解できないものからすれば、その信奉者はカルトにしか見えない


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記:ヒロト


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