『ホテル・ルワンダ』/2004/監督:テリー・ジョージ/英・伊・南阿/カラー/2012.2.2記 ----------------------------------------------------------------------- 二人以上の人間が集まればその間には諍いが生まれる。争いの火種は何だろうか。些細な考え方の違いかも知れないし、互いに譲れぬ主張がぶつかったのかも知れない。もしかすると、ただ虫の居所が悪かっただけかも知れない。 多様な火種は風で吹き消されるものもあるし、突然天高くまで火柱が起こるものもある。けれど最も性質が悪いのは、長く燻り続ける火種だろう。何かをきっかけにし、瞬く間に周囲に燃え広がるのだから。 その国の火種はまさにそれであった。 1994年、中部アフリカに位置するルワンダ共和国で起きた大虐殺。たった100日足らずでルワンダ国民の二割近くがこの世を去った惨たらしい出来事は、人種差別という火種によって生まれたものだった。 痛ましいこの大虐殺には、ホロコーストにおけるシンドラーのように難民に手を差し伸べた者がいた。その男、ポール・ルセサバギナの実際の行いを基に作られたのがこの映画であるが、単なるドキュメンタリーに留まらず、人種差別問題やそれに対する社会のあり方などを観る者に「丁寧に」訴えかける演出がなされている。 初めは自分と家族さえ無事なら他を見殺しにしても構わないと思っていたポールは、良心と葛藤しながらも家族を優先し行動する。しかし少しずつ侵食してくる非情な現実に目を背けられず、やがて難民を自分の働くホテルへと導く。 彼と彼を取り巻く人々の目を通して伝えられる「蚊帳の外」の無機質な責任感。そしてルワンダ国民の心深くに根付いた民族間の差別意識。自らの生まれを憎みながら死んでいく者や、鈍色の狂気をかざす相手に最後まで説得を試みる者などの犠牲者の声。 それら「見えないもの」を映像化することこそ『映画』であるのだろう。 私は最後の旅立ちのシーンまで片時も目を逸らせなかった。私もその様子をリアルタイムで見ているような気がしたからだ。ただし、「蚊帳の外」の中から……。 ----------------------------------------------------------------------- 記:うづき |
2012年2月2日木曜日
映画 『ホテル・ルワンダ』 問題提起とはかくあるべき
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