『戦略大作戦』/1970/監督:ブライアン・G・ハットン/米/カラー/2012.3.19記 ----------------------------------------------------------------------- 第二次世界大戦末期のフランス。損な役回りばかり回ってくるジョー率いる小隊に、休暇中に転げ込んだ碌でなし少尉のケリーが持ってきた儲け話。不満が募っていた小隊は勝手に独軍が護る金庫のある街に進撃を開始する。 今じゃ考えられないことだが90年代に差し掛かるまでアメリカにおいてはWWⅡは英雄譚であり、ヒーローたる兵士が痛快な活躍を演じる場であった。本作はそんな中で製作された映画の一つだが、様々な戦争活劇の名作が生み出されつくした後の70年制作だけあって、このジャンルの集大成的完成度を持ちながらも、異色作としての側面も垣間見せてくれる非常に内容の濃い映画となっている。何と言っても登場人物が愛国心や生きる為といった思い名目でなく、物欲から行動を起こすあたりが、それまでの戦争映画と一線を画している。 キャラも誤って味方の陣地を攻撃して解任されたイーストウッド演じる少尉を始め、上官が死んだので前線に出ることもなくワインと女で日々を潰すちょっとキテるドナルド・サザーランドの戦車長等、相当癖が強く魅力的である。 製作陣が見せる兵器へのこだわりなども当時としては珍しいくらい表現されており、実に様々な兵器が登場するのも楽しい。米軍側のシャーマンはもちろんのことハーフトラックもきっちりバリエーションされたものを別に用意され、思う存分活躍してくれるし、兵士の自分の獲物に対する信頼のセリフも粋で格好いい、曰く『シャーマンは良い戦車だぜ?、頼りになる』や『せっかく磨いた砲を雨で濡らしたくないんでね』など思わずニヤリとしてしまう。 独軍車両も改造車両を駆使してかなり作りこまれた兵器がガンガン登場してくれる。特にティーガーはお馴染みT34改造車両でかなりSDなフォルムながら、細々したディテールのこだわりで相当な貫禄を醸しだしており、強敵として申し分ない迫力を持って大暴れしてくれる。また、独軍の人物も。それまでの戦争映画では史実の人物くらいしか人格を描かれることはなく、一般兵は戦闘マシーンのように描かれたのとはうって代わり、珍しく一部のキャラにはとても人間らしい愛のあるキャラ設定を作られている。 命令に忠実な頑固なドイツ兵ではああるものの、お酒に弱くて機密情報べらべら喋っちゃう大佐や、騎士道精神にあふれた雰囲気を持ちつつお金の話で主人公と和解しちゃうティーガーの戦車長など……。本当に、人間として好きになれちゃう描かれ方をされているのも、この映画の魅力なのではないかなと感じてしまう。 ----------------------------------------------------------------------- 記:るん |
2012年3月19日月曜日
映画 『戦略大作戦』 戦争活劇の魅力
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